ガソリン価格の上昇を抑えようと、政府は石油元売り会社に補助金を出すという異例の対策を始めましたが、その後もおおもとの原油価格は上昇傾向です。こうした中、ガソリン価格高騰への次なる秘策としてあることばが霞が関・永田町で飛び交っています。それは「トリガー条項」です。いったいどんなものなのでしょうか。エネルギーを担当する五十嵐圭祐記者、教えて!

五十嵐記者

そのとおりです。1月27日から適用されました。
レギュラーガソリンの小売価格の全国平均が、1リットルあたり170円を超えたときに補助金が支給されます。
27日から適用された補助金の額はガソリンで1リットルあたり3.4円分で、経済産業省は2月2日に発表されたこの週のガソリン価格のうち、2.5円分が小売価格に反映され、値下げになったとしています。
対象はガソリンだけではなくて、灯油や軽油なども入ります。
ただ、この制度では、補助額の上限は5円と定められている上に、ことし3月末までの期間限定の措置となっているんです。
五十嵐記者
そうなんです。萩生田経済産業大臣は「もし原油価格が上がり続けるという事態になれば、国民生活に大きなダメージを与える」として、追加の対策を検討する考えを示しています。
そして「あらゆる選択肢を排除することなく不断の検討をしていく」と発言しています。
その選択肢の1つではないかと浮上しているのが「トリガー条項」なんです。
五十嵐記者
そうですね。トリガーは英語で【trigger】とつづります。
「銃などの引き金をひく、(装置などを)動作させる、(出来事を)引き起こす」などの意味があります。
ガソリン価格が値上がりしたときに、それをストップしようとある仕組みを動作させる、そんな意味ですね。
では具体的に「トリガー条項」がどのようなものかというと、ガソリン税とよばれる税金のおよそ半分をガソリン価格が高騰したときには一時的に免除して消費者の負担を抑えましょうという仕組みです。
2010年に当時の民主党政権のときに導入されました。
五十嵐記者
発動できないよう法律で凍結されているんです。
2011年に東日本大震災が起きたときに復興財源を確保するため、震災特例法という法律で発動を凍結する措置が取られました。
結局、一度も発動することがないまま今に至っています。
凍結を解除するには、この震災特例法を改正する必要があり、ハードルが高いんです。
五十嵐記者
そして、大きな論点になるのが、税収の問題です。
ガソリン税による税収は、今年度・2021年度の見込みは2兆2914億円。
このうち、上乗せ分は1兆円余りです。
トリガー条項を発動すれば、仮に1年間続くと1兆円の税収を失うことになります。
財政をつかさどる財務省は大反対するでしょうね。
五十嵐記者
いわゆる二重課税の議論もありますね。

ガソリンにはさきほど述べましたガソリン税(53.8円/リットル)に石油石炭税(2.8円/リットル)のあわせて56.6円がかかっています。
さらに購入価格には10%の消費税がかかってきます。
税金がかけられたうえから消費税がかかっているので、二重課税ではないかという指摘が出ているんですね。
五十嵐記者

トリガー条項がさらに難しいのは仮に発動すると、政府から「ガソリンを大幅に値下げして、もっとクルマに乗ってください」というメッセージにならないかという懸念があるんです。
脱炭素を目指す政府にとって逆のメッセージを与えてしまうとなると、これは困りますよね。
いろいろ課題が多いのですが、それでもこの話題が消えずに持ち上がるのは、ガソリン価格高騰への対策として強力だからです。
2月3日、ニューヨーク原油市場では国際的な指標となるWTIの先物価格が一時、およそ7年4か月ぶりに1バレル=90ドル台まで上昇しました。
原油高が4月以降も続けば、国民生活や企業活動に大きな打撃を与えるのは確実です。
政府としてどのような手段なら取りうるのか、議論が続きそうです。
からの記事と詳細 ( ガソリン価格高騰 次なる秘策? 「トリガー条項」 | NHK - NHK NEWS WEB )
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