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Thursday, September 16, 2021

五輪の後の秋場所 若林哲治の土俵百景:時事ドットコム - 時事通信

2021年09月16日19時43分

心の中の「ヨイショ!」

 入場者数の制限が続き、なおかつ空席も多いのに、横綱土俵入りにこれほどの拍手が起きたのは久しぶりではないか。

 秋場所初日。照ノ富士の土俵入りは新横綱としては立派なものだった。両膝にごついサポーターが巻かれているのは確かに美しくないが、致し方ない。むしろこの膝で最高位に就いた努力に思いを馳せて見れば、それもまた照ノ富士という横綱の土俵入りの味わいになっていくかもしれない。

 大相撲の観客は新型コロナウイルス対策のルールをよく守るので、「ヨイショ!」「日本一!」などの掛け声がないのは寂しいが、しこに合わせて心の中で「ヨイショ!」と言って手を打ってくれる。初秋の館内に、温かい風が吹いた気がした。

 私は、今の琴ノ若の祖父である琴桜の不知火型が好きだった。堂々たる太鼓腹ときれいに伸びた両腕。怖い顔でじりじりとせり上がる。迫力と威厳があった。引退後、後輩の横綱に不知火型の指導をした時、「地球を持ち上げるようにせり上がるんだよ」と教えたのは、名言だった。

 照ノ富士は師匠(元横綱旭富士)に似て、てのひらが下を向き気味なのがちょっと気になるが、白鵬よりずっといい。昔から「横綱は土俵入りがうまくなったら引退が近い」と言われるくらいで、初めからうまい横綱は少ないから、もっと良くなるだろう。実は過去の横綱を見ても意外とまちまちで、教科書のようなお手本はあってないように思う。

 慣れてからもたまに間違う横綱がいて、二字口へ下がる時にうっかり正面へ尻を向けたり、白鵬のようにせり上がりを忘れたりするチョンボもあった。

 それより照ノ富士の場合、昇進前から心配されたように、膝への負担が気にかかる。重い綱を締めて行う土俵入りは、見た目よりずっと疲れるという。「腹に子どもがぶら下がった状態でしこを踏むような感じ」「体調が悪い時、土俵入りだけでもいいから巡業に出てくれと言われるけど、土俵入りが大変なんだよ」と元横綱から聞いたことがある。後半戦になって疲れが出なければいいのだが。

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