Pages

Thursday, May 27, 2021

服装に決まりはある? - 読売新聞

 ふだん大阪・関西将棋会館の対局室に入ると、盤を挟んで向き合う棋士たちのスーツ、ネクタイ姿が目に入ります。まさに「職場」といった感じなのですが、畳の上で正座をするには窮屈そうにも見えます。今回は対局中の服装について、豊島将之竜王(31)に聞いてみました。

◇常識の範囲で

 スーツって、肩凝りますよね。動きにくいし。Tシャツとか、スエットとか、もっと楽な服装ではダメなんでしょうか?

 矢継ぎ早に問いかけると、豊島竜王は「えーっと……。スーツって楽ですよ」とまず一言。「『他の服装なら楽』なんて思ったこともないです」と笑います。「勝負スーツ」は特にありませんが、ネクタイの色は青が落ち着くのだそうです。

 カギは棋士を目指す人たちが所属する「奨励会」の指導にあります。奨励会で対局時の注意として言われるのが「襟のない服、ジーパンは不可」。豊島竜王もそう教わり、すっかり体に染みついたようです。

 日本将棋連盟関西本部によると、プロ棋士に明文化された「ドレスコード」はなく、「常識の範囲内」で各棋士に任されています。とはいえ、長い伝統が息づき、作法が重視される世界。ラフすぎる服装には眉をひそめる空気もあります。実際、チノパンや作務衣さむえで対局した棋士もいますが、みんながスーツでいると、ちょっと目立ちますよね。

◇師匠の贈り物

 忘れてはいけないのが和服です。現役時代の加藤一二三ひふみ九段(81)、最近では永瀬拓矢王座(28)ら“大舞台でもスーツ”派は確かにいますが、タイトルを争う七番勝負、五番勝負などでは、多くの棋士にとっての「勝負服」。古くは着流し姿が主流でしたが、1909年に将棋界初のプロ団体「将棋同盟会」が発足後、対局時の正装としてはかまの着用が定着したようです。

 豊島竜王は「日本らしさが出るし、タイトル戦ならでは、で気も引き締まります」と言います。タイトル戦のたびに自費で何着か新調しており、今では10分あれば、着付けも大丈夫とのこと。「思い出の1着」は、初のタイトル戦となった2011年の王将戦第1局で着た紺色の着物です。16歳でプロになった時、師匠の桐山清澄九段(73)から贈られた反物を仕立てたものだとか。

 「師匠は弟子入りから8年間、毎月1局指してもらった特別な存在。身に着けてタイトル戦に出る、という目標の一つを達成できて感慨深かったです」。親心がしみじみと感じられるのも、和服の力なのかもしれません。いいお話を聞かせていただきました。(松浦彩)

 ◎次回は6月10日に掲載予定です。読売新聞大阪本社文化部「観る将のギモン」係にメール(o-bunka@yomiuri.com)で疑問を受け付けています。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 服装に決まりはある? - 読売新聞 )
https://ift.tt/2SAPJiD

No comments:

Post a Comment