対談 歴史社会学者・小熊英二さん×社会人口学者・是川夕さん
人口減少と少子高齢化に直面する日本で、定住外国人、つまり移民の存在感が増している。彼ら彼女らは日本社会に溶け込んでいるのか。移民によってこの国は変わるのか。マクロな視点で移民研究をする是川夕さんと、著書「日本社会のしくみ」で日本の暗黙のルールを解き明かした小熊英二さんが対談した。
――「移民」は日本社会にゆるやかに溶け込んでいると是川さんは分析されていますね。
是川 「はい。複数年の国勢調査のマイクロデータを元に分析したところ、ゆるやかな社会統合が進んでいるという結果が導き出されました。欧米の移民研究では文化的な統合だけではなく、生きていく上で欠かせない労働、教育、結婚などに関する平等性について分析するのが主流で、私の研究はその視点で分析したものです」
「これまで日本では『移民受け入れはしない』という建前を前提に、正当ではない方法で外国人を入れているという視点で主に移民研究が行われてきました。日本人の排外意識や移民政策の不在によって、差別や分断が起きているという見方です。しかし、この方法では、移民間の多様性や、時間が経つことによる移民自身の暮らし向きの変化を説明できないという問題があります。移民受け入れに関して、日本社会は全体としてどの方向に向いているのか、大きなマクロの見取り図を描きたいと考えています」
小熊 「是川さんの分析には大きな意味があると思います。一部の外国人労働者が置かれた悲惨な状況の告発は大切ですが、一方でそこから外れる多くの人が見えにくくなっていたのは確かでしょう。それを認めた上で、外国人労働者全体のうち、日本社会に統合されたといえる人がどれほどいるのかが気になります。来日して5年、10年が経ち、社会に適合できた人だけが残ったということはありませんか。そういった人たちの間で社会的地位や賃金の上昇があったとしても、外国人の全体像といえるでしょうか」
日本に来た留学生は日本に定住する割合が諸外国と比べて高い、と指摘する是川さん。背景には新卒一括採用の雇用慣行があると言います。一方、小熊さんはそのルートに乗れなかった外国人はどうなったのか、と指摘します。技能実習生制度が抱える問題点と旧来の日本社会の構造の関係についても語りました。
「新卒一括採用」ルートに乗れなかった人はどうなったか
是川 「確かに短期で帰る外…
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