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日本代表は27日、カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選で中国代表を埼玉スタジアム2002に迎えて2-0で勝利。スペイン紙『as』の試合分析担当ハビ・シジェス氏は、試合にはスコア以上の差があったと述べ、とりわけ日本の選手間の調和を称賛している。
文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎
■位置取りの妙で中国組織を破壊
ここ最近の日本は戦うための自信を取り戻したようだ。この中国との一戦は、ただ勝ったというわけではない。彼らはもう少し信頼されるにふさわしい試合を演じ、W杯本大会へと続く道をまた一歩進んだのだった。
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日本のパフォーマンスは確かに良質なもので、輝かしいと形容できる時間帯もあった。中国の超守備的な姿勢は厄介ではあったものの、森保一監督のチームには落ち着きと厳格さが備わっており、そして攻撃の意思と機動性によって見事に試合を解決している。フットボール的な実力で確かに勝っていたために、想像よりも簡単な一戦にさえ映った。
森保監督は今回、両センターバックで初めての組み合わせを試し(板倉滉&谷口彰悟)、左サイドバックに再びベテランの長友佑都を起用し、守田英正と遠藤航をコンビにすることで田中碧に自由を与え、前線にはまたも南野拓実と大迫勇也を配置した。攻撃時のシステムは1-4-2-3-1で、田中がインサイドハーフになったりトップ下になったりすることでニュアンスをつけている。
日本はこの試合で、一切尻込みをしなかった。積極的にボールを動かし、ポジションを入れ替えて、中国人選手たちの守備の圧迫を緩めることに成功。田中は両サイドハーフや大迫と同程度の高さにポジションを取り、また伊東純也、とりわけ南野が内に絞るときには酒井宏樹と長友が彼らの空けたスペースを利用していた。
このポジショニングが生み出すダイナミズムによって、日本は中国の引きこもり戦術をほとんど問題にしなかった。中国が中央とサイドの守備バランスを取れないようにし、ライン間へのパスコースを常に確保していたのだ。守田と遠藤は日本のポゼッションを見事に管理し、田中、伊東、南野、大迫の長所を引き出すことに注力している。
その中で大迫と伊東は興味深い動きを見せていた。スペースがなければ中国DF陣の背後を狙い、伊東は内から外への動き出しでCBとSBの間も突く。板倉と谷口はロングボールを送ることも厭わず、日本はパスの選択肢と(彼ら自身でつくり出す)ライン間でのパスの受け手を、試合を通して欠くことがなかった。
加えて南野は自分がすべきことをしっかりと理解し、中国の守備的選手(SB、CB、ボランチ)を引きつけながら、日本が深みを取ることに一役買っていた。左サイドで守田、SB(長友、後に中山雄太)と見せていた連係もしっかり効力を有している。リヴァプールFWはまだ完全ではないものの、イングランドでの挑戦を始めた頃に期待されたような選手に近づいているようだ。
大迫については、クラシックなストライカーというよりもファルソ・ヌエべ(偽9番)の役割をうまくこなすことのできる選手だ。彼と南野のポストプレー及び、然るべきサイドに流れていく動きは、田中や伊東の飛び出しを促すものになっていた。また、酒井と長友(より素晴らしかったのは途中出場の中山だったが)のピッチを広く使う位置取りは、中国の守備ブロックを横に引き伸ばしている。
■伊東は強豪リーグでプレーすべき
欧州から見ていると、中山、堂安律、久保建英、前田大然がスタメンでなかったのには驚いた。ただし、彼らより(欧州で)ネーム的に劣っていると思われる選手たちが、その通りに劣っているというわけではない。
その良い見本が伊東だ。ヘンクのウイングは、もはやベルギーではなく欧州の強豪リーグでプレーすべきだろう。その出場機会はなぜか断続的なものになっているが、W杯予選で決定的なプレーを最も継続的に見せているのは彼にほかならない。
伊東のプレーは予測がつかない。ポジションを中に絞るのかサイドに開くのか、それとも足元でボールを受けるため下がってくるのか、はたまた相手の守備に亀裂を入れるべくマークを外す動きを見せるのか……。彼はボールを持っているときだけでなく、持っていないときにもプレーしている選手であり、中国の左SBを務めたチュン・チュンの頭痛を引き起こした。
伊東の熱意とインテリジェンスは立ち上がりの日本を間違いなく活気づけていたし、また大迫勇也のPK弾とヘディングシュートによるチーム2点目には、彼の印がしっかりと刻まれていた。勝利への道を指し示す選手というのは、まさに彼のような存在を言うのだ。
■日本が示した一貫性と進歩
フットボールの試合は、その一つひとつが何かを物語っているが、この一戦も例外ではなかった。日本は戦術的バランス、とりわけボールを失った直後の動作とファーストプレスが間違いなく改善されている。日本は1-4-1-4-1を駆使した調和と団結力がうかがえる守備で、中国のあらゆるカウンターを阻止。遠藤の仕事ぶりは相変わらず並外れており、その素晴らしいポジショニングと直感によって、何度もボールを奪取していた。
また彼だけでなくチーム全体の働きも見事で、キックオフから試合終了のホイッスルまで誰が出場してもチームとしての考え方は一貫したままだった。前田と中山、さらに久保が途中から出場しても、日本は変わらぬインテリジェンスと確信でプレーし続けている。中国が実現可能だった攻撃方法は、1トップのジャン・ユイニンに直接ボールを出すことのみとなったが、それも板倉と谷口が難なく処理していた。
日本がボールを持っても持たなくても良いプレーを見せられるならば、この中国戦は試合として成立してはならないし、内容的には実際にそうなっていた。その完全な優位性は完全にはスコアに反映されておらず、森保監督のチームはいつも通りゴールを欠いてしまったが、今回に関してはさして重要なことではない。
日本のパフォーマンスは誰にも何にも揺るぐことがなく、批判さえ許さないレベルにあったのだから。日本は2位の座を堅守してサウジアラビアとの事実上の“決勝戦”に立ち向かう。異なる状況、異なるライバルとの対戦となるが、今のようなフットボール的慣性が働き続けるならば期待しかできない。日本がすべきはしっかりと期待に応えること、しっかりと期待を裏切らないことにほかならない
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