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米軍の完全撤退後、タリバンによる本格的な統治が始まってから2か月あまりが経ったアフガニスタンの首都・カブールに、TBS中東支局・須賀川拓記者の取材チームが入りました。 アフガニスタンの状況はいまも極めて深刻で、国連によると、3800万人の人口の97%が貧困ラインを下回ると試算されています。武装したタリバン兵士が点在する街を車で巡ると、麻薬を吸う大人、物乞いをする子どもなど、市民生活の実態がうかがえました。 ■11月7日、イスラマバードからカブールへ パキスタンのイスラマバード国際空港、民間機が停まっているところからちょっと離れたところまでバスで来たんですけれど・・・見えてきた、あれがWFP(国連世界食糧計画)の機体ですね。ジェット機もヘリコプターもあります。WFPはこういったロジスティックスを保有しているのが、すごい強みなんです。これが世界中のいわゆる、食糧難に襲われている国に、支援物資を届ける機体です。今回特別な許可をもらって、このWFPの機体に乗り込んで、これからカブールに向かいます。 WFPの専用機がイスラマバードの空港を離陸しました。このままカブールに向かいます。カブールまではフライト時間は1時間ほどです。カブールの状況がどうなっているのか。冬間近と言われてますがもう冬が到来してる地域もあります。そしてタリバンの統治が始まってから、しばらく時間が経っていますが、経済状況はどうなっているのか、犯罪の状況はどうなっているのか、そのあたりをしっかりお伝えできればと思っています。 窓の外に見える、このアフガニスタンの大地の色、パキスタン側とも全然違っていて、もうほとんどが茶色なんですね。ヒンドゥークシュ山脈っていう真ん中にある大きな山脈から、川が流れた跡が見えるんです。ほとんどがもう乾いてしまっていて。もちろん季節もあると思うんですけども。(ペシャワール会の)中村医師が、乾いた土地にどうやって水を行きわたらせようとしたのかっていうのが、上空から見るとよくわかります。 山と山の間に、村が見えるんですけれど、本当に谷間と谷間の間に点在しているんですね。なのでアクセスも非常に難しい・・・カブールの街が見えてきましたね。 上空から見ても、街を歩いてる人の姿っていうのは、あまり確認できません。大きな工場のようなものも見えます。そして建築途中の、ビルのようなものでしょうか。 まもなく着陸します。アメリカ軍の軍用車両を使ったものですね、おそらくタリバンの精鋭部隊が使ってるものが、空港の周りに展開しているのも見えました。 ■交通量の減った街 11月7日の午後4時半過ぎです。つい先ほどタリバンの取材許可書をもらって、撮影していいということで、車の中で撮影を開始したんですが、見る限り、街の人々の表情はそれほど緊張を感じません。そして商店も開いてるんですね。パン屋もありますし、路上で果物なども売っているんですね。 白い壁が見えてきたんですが、この壁のちょっと曲がったところ、亡くなられたペシャワール会の中村医師の壁画があったところなんです。花のすぐ脇に中村さんの肖像画があったんですが、消されてしまっていますね。中村さんの肖像画の部分が消されて、「自由を謳歌している」、そういったような言葉が書かれているわけなんです。おそらくタリバンがカブールを制圧して、その後のことなので、そのときの共和国の政権から自由になった、アメリカの侵略から自由になったということで書かれたと思うんです。 そして今このように走っているんですが、車の数も以前と比べて少し減っているみたいで、本来であればこの辺りはものすごい渋滞だったみたいなんです。まずガソリンの値段が倍ぐらいになっていると。そのおかげで市民生活が圧迫されているので、運転が難しい。なおかつ、車をもっている中間所得の方、中間から中の上、そういった車を持って自由に生活できる人々がたくさん国外に出てしまったというふうに言われているんです。ですので結果的に車の数も減っている。当然このあたりにたくさんあった在外公館、大使館ですとか、あとはそれに付随したビジネスで来ていた海外の人々、そういった人たちがほとんど入ってきていないので、そういった意味でも交通量がかなり減っているということです。 ■“フレンドリー”なタリバン兵士 街中にタリバンのチェックポイントがたくさんあったみたいなんですけれども、ここ数週間の間でそのチェックポイント、ずいぶん減ってきたと聞いています。私達が1か月以上前にアフガニスタンに入ろうとしたときは、街全体がタリバンのチェックポイントだらけだったらしいんですが、今こうやって運転してると、もうそのチェックポイントというのも運転し始めてまだ1回しか通りかかっていないんですね。なのでそれだけ、ある意味治安が安定しているとも言えるわけなんです。 街の中心部に入ってくるんですけれど・・・あ、いまタリバンの兵士が車をチェックしてますね。(私達の車も)チェックするということなんですが、かなりフレンドリーな感じです、笑顔で。あ、チェックもないですね。彼が持っていた銃はM16ですね。アメリカ軍から得たものですね。もう1人のタリバン兵が持っていたのは、カラシニコフAK-47って、元々彼らが持っていた、ロシアなり、中南米から入手したものです。 ちょっと表現が難しいんですが、つい2か月ちょっと前にこの辺りでものすごい緊張が走って、人々が空港に殺到してという状態だったはずなんですけれど、住んでいる人々の表情というのは極めて落ち着いていて、今のタリバン兵も、我々が日本人、ちょっと顔が現地にいるハザラ人に似てるので、ハザラ人じゃないかと言われたりとかですね、冗談を飛ばしたりとかいうようなこともあるわけなんです。なので、シュールという言葉は正しいかどうかわからないんですけれど、本当に混沌として、あれだけの爆発テロがあってあれだけの人たちが亡くなって、米軍の20年来の最大の撤退作戦があったその場所には到底思えないぐらい、落ち着いているように感じるんです。 今あそこに見えるのは機動戦闘車ですね。これも間違いなくアメリカ軍から得たものと思われますが、タリバンの旗が掲げられていて。ああいった軍用の車両がそこかしこに置いてあるんですけれど、整備が行き届いてるかどうかわからないんですが・・・まだ窓ガラスが割れてるものがあったりだとかあるんですけれど、ほとんどはタリバンの白い旗がちゃんとつけられてるんですね。果たしてあれ(軍用車両)が使えるのかどうかっていう疑問があるんですけれども、荷台に積んであるこの50口径のマシンガンのところに、弾倉もついててですね、弾もちゃんと充填されているんですね。なので、おそらく使える状態にあるんじゃないかと思うんですが。 右の壁、この内側が大統領府だということなんすけど、見事にタリバンの旗が上げられてますね。なので、カブール陥落の直前にガニ政権のガニ大統領が逃走して、その際にたくさんの現金を持ち去ったという話も報道もされていますけれど、そのガニ政権が事実上崩壊して、直後に無血開城をしてカブールに入ったタリバン兵がこの中で記念撮影していたのは、かなり印象的で衝撃的な映像でした。まさにその現場となったのはこの壁の内側ですね。大きいねやっぱり。 ■「4G」「LTE」の古びた広告 そこの壁、もうすすけているけど、「4G」「LTE」と。壁の広告が古ぼけてしまうぐらい(通信状況は発達している)。よくアフガニスタンに取材に来るって言うと皆さん、電話は通じるのか、食料あるのか、治安は大変なんじゃないかっていうご心配、多くの方あると思うんですけれど、実はこういうところって、携帯の通信網っていうのは極めて重要なインフラなんですね。送金をしたり、通話をしたり、メッセージアプリをしたり。なので実はこういう途上国だったり、本来のインフラはあんまり整っていなくても、通信インフラが整っているということはよくある。リープフロッグ現象なんて言われますけれども、本来の生活基盤は整ってないけれども、テクノロジーだけ先に進んでしまうっていうことなんだと思います。 ■物乞いの子どもも・・・ 子供たちが渋滞して止まってる車の間を縫って、物乞いに来るんです。昔はアフガニスタン人は、パシュトゥン人含めてものすごく誇り高い民族だったので、そういったような光景は見られなかったということなんですけれど、今となってはやっぱり生きていくだけでも大変ですし。ここは都市部なので多くのモノが集まって、当然、中産階級、お金を持った人たちもかなりいるんですけれど、農村部に行くとその様相はかなり変わってくるんじゃないかなと思います。 今ちょうど、夕方の祈りのアザーン(イスラム教の礼拝の時刻を告げる呼びかけ)が、流れてきています。フィクサーさんに聞いたんですけれど、20年前、タリバンの前政権のときにはお祈りをしなかったっていうだけでむち打ち刑にさらされてしまうということがあったらしいんです。今こうやって見てみると、そういった光景はもちろんなくて、アザーンが流れていてもみんなほぼ普通に生活している人たちもいるというところを見ると、タリバンも少なくとも現時点では、変わろうとしている、少し変わってきている、前回の政権時とは少し違うのかもしれないっていう希望も見えるんじゃないかというふうに思います。 ■モノはあるが現金がない・・・広がる貧困 この辺りがいわゆるショッピングセンターですね。ちょっとお店の中撮るのは禁止ですけれど、あそこ見えるかな、ショッピングセンターの中。ネオンはキラキラして、もうね、iPhoneも宝石も売ってますし、黄金も、服も売ってる。スーツも、女性用の海外の化粧品みたいなのもいっぱい売っていて。さっきここでSIMカードを買ったんですけれど、あそこの中に踏み込むと、ここがアフガニスタンなのかって思うくらいモノがあふれているんですね。物が全くないわけじゃない。食べ物が全くないわけじゃない。にも関わらずなんでこんなに困窮してるかというと、やっぱり現金がないというのが全てなんだと。ついこの間までアフガニスタンの中央銀行は現金の引き出しを制限していて、数日前からようやく引き出しの幅が少し増えて1000ドル以上引き出せるようになったらしいんですけれど、それでもそもそも国庫と、銀行にキャッシュがないので、引き出そうにも引き出せない、そんな状況が続いているわけなんです。なので、これはタリバン側の言い分ですけれど、我々は物がないんじゃない、食べ物がないんじゃないと。人々の貧困は、制裁によって、起こされている。この制裁さえなければ貧困は解消されるんだから、なぜ国際社会は、そこを声高に訴えてくれないんだっていうふうに言っていました。 ただ一方で、制裁を解いてお金が潤沢になった途端、タリバンの統治の仕方、厳格なイスラム主義、独自解釈、そういったこの20年前の統治の仕方が戻らないのかというとそんな約束はやっぱりないわけで、多くの人たちは20年前の苦い記憶があるわけなので、やっぱりそう簡単にお金をあげよう、制裁を解除しようとはならないんです。なのでタリバンは、国際社会がお金を解放してくれないから貧困がなくならない、貧困が広がっているというふうに言うんですけれど、その種を蒔いてるのは自分たちであるわけなので、当然我々も厳格に精査しなきゃいけないし、タリバン側も国際社会の信用を勝ち取るために努力は続けなくちゃいけない。そういう状況なんだと思います。 夜のマーケットにも、新鮮な野菜とか果物がところせましと並んでいるんです。にも関わらず、ほとんどの人たちはそれを買うことができない。タリバンが言うことを完全に鵜呑みにはできませんが、やっぱりお金が銀行にあるのにそれを引き出すことができないことによって、生活がままならなくなった人たちも当然いるわけなので。 まだカブールは少し涼しいぐらいですけれど、山間部は雪が積もっています。もう冬は始まってるんですね、地域によっては。なのでこうして困窮する人々をどこまで救うことができるかというのは重要な課題だと思います。 ■“粗悪な麻薬”が社会問題に すごい人が集まってるね、これ。薬やってる?あー、やっぱり。アフガンはですね、ケシの実ですね、アヘン。ヘロインだったりコカインのもとになる、ケシの実。ケシの実の栽培は世界の生産の9割を一時期担ったと言われています。海外の麻薬カルテルに流れる高級な麻薬を作った後にできる、いわゆる“残りカス”で作った極めて粗悪な、安い麻薬というのが出回っていて、それが今実は大きな社会問題にもなっているんです。タリバンは厳格なイスラム主義を掲げてますから、麻薬は厳禁です。麻薬の摘発というのも進めているみたいなんですけれど、果たしてそれが、どこまで効果があるのかちょっとわかりませんね。 アフガニスタンに来てまだ1日目。お昼前に到着して、まだ6時間、7時間ぐらいしか経っていないので、カブール市内をちゃんと見られたわけではないですし、本当に表層をさらっと見ただけではあるんですけれど、この後、人々がどんなことを思っているのか、実際に迫害された少数派のハザラ人の人たちがどう思ってるのか、女性人権家がどう思ってるのか、女子教育の現状が今どうなっているのか。ヘラートというところで、女子の中等教育が始まりましたけれど、これも全域で始まったとは到底言えないわけなので、果たして今後それがどういうふうに動いていくのか。そして治安状況も含めて、アフガニスタンが今後どうなっていくのかというのを、日々取材していきたいと思います。 (11日12:36)
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