
* * * 出版関係の友人が、「ワクチン反対の本が売れている」と言っていた。確かに少し前ではあるが、アマゾンの売り上げランキングでも100位以内に、ワクチンの危険をあおるような本や、そもそも新型コロナウイルスなどというものは恐れるべきじゃない、怖いのはメディアだ!という論調の本が複数入っていたのを見て驚いたことがある。なかには医師によって書かれている反ワクチン本が10万部以上売れていたりなど、少なくない人が影響を受けていると思われる。 ……というか、私の友人がいつのまにかソレにはまっていたのだった。 久しぶりに確認した友人のSNSのタイムラインに、ドイツのメディアが正式に「コロナはうそだった」と謝罪したとか、PCR検査によって意図的に感染者がつくられているとか、ワクチン接種は人体実験のために行われているとか、5Gがコロナを広げたとか、「メディアは恐怖をあおるな!」とノーマスクで集まっている集団の講演会などがほぼ毎日紹介されていた。だいたいがYouTubeからの引用で、“マスコミはうそしか言わない”ので、だからこうやってSNSで本当のことを伝えていこう!という妙な明るさと使命感に満ちあふれたタイムラインになっていた。 心優しく正義感の強い40代の女友だちだ。仕事を通して出会い、彼女の物事を見つめる視線の確かさを信頼もしてきた。それがなぜ?!とかなり混乱しつつ、元気?どうしてる?と電話してさりげなくいろんな話をしてみようかなとスマホを手にしては、ノーマスクでパーティーをしている写真などをみると途端に気が重くなったりを繰り返している。 最初の緊急事態宣言から約17カ月。去年の今ごろ、「今よりももっとひどくなっている」未来を想像できていた人はどれほどいるだろう。変異する度に強くなるウイルスに科学は追いつかず、ワクチンは一縷の希望ではあるが万能ではなく、終息に向かう国はあっても世界はまだまだ緊急事態の最中だ。人類の歴史はウイルスとの戦いの歴史……ということは「知識」としては知っていたが、その渦中を生き、そのために未来が見通せない人生を送ることになるとは、去年の夏の私には想像できないことだった。強いられる理不尽、「見えないもの」との終わりの見えない戦いに多くの人が疲弊しているなかで、簡単に得られる「信じたい“真実”」にすがりたくなる人は、実はかなり多いのかもしれない。
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