東京五輪第13日・陸上(4日、オリンピックスタジアム)男子110メートル障害準決勝で、金井大旺(25)=ミズノ=は転倒し、26秒11の2組8着で日本勢初の決勝進出を逃した。
「最初で最後の挑戦」に敗れた金井は、転倒したレーンに向かって深々と頭を下げた。26秒11。自己ベストの倍近い時間がかかった。それでも、10台のハードルを跳び切った。集大成の東京五輪で確かに記録を刻んだ。
「これまでいろいろあって…」と言うとポーカーフェースの25歳が珍しく涙ぐんだ。「挑戦してきて…すみません…」。悔しさを表現する言葉が見つからなかった。
鋭い出足で4台目まで先頭を争った。バランスを崩したのは後半の8台目。右隣の選手と腕が接触し、9台目の前でつんのめるように倒れた。顔をゆがめながら起き上がると、ゆっくりと残り2台を跳んでゴールした。
今季限りで競技を離れ、父・敏行さんと同じ歯科医を目指す。北海道・函館ラサール高時代は専門コーチがいない中、母・道子さんが撮影したビデオを頼りにハードリングを磨いた。憧れは2004年アテネ五輪を制した中国の劉翔。「アジア人でもここまでタイムを出せるんだよ」。何度も映像を見て、家族が飽きるほど話題に出した。
自前のハードルを自宅の庭に置き、毎日跳び続けた。「グラウンドの端っこをハードル幅で110メートル買ってくれ」と両親に求めたこともあった。
「技術に人一倍、目を向けてきた」という言葉に、にじんだ矜持(きょうじ)。走りきった姿に、周囲から温かい拍手がわき起こった。(鈴木智紘)
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